水道水の残留塩素は、市販の簡易キットを使えば自宅でも測れます。測るのは「遊離残留塩素」で、蛇口で0.1mg/L以上あるかが基準の目安です。結果を正しく読むには、測定器の種類よりも「水の採り方」と「読み取るタイミング」が大切です。
この記事は、実際に測ってみたい方向けの実践編です。残留塩素そのものの仕組みや種類は、残留塩素とは?で解説しています。
家庭で使える3つの測定方法(DPD試薬・試験紙・デジタル測定器)の違い
測定値がぶれにくい採水と読み取りの手順
0.1mg/L以上・1mg/L以下という2つの数値を使った結果の読み方
自分の地域の公表データの調べ方と、浄水器の前後で比べるときの条件
測り直すべきケースと、水道局や建物の管理者に相談したほうがよいケース
家庭で測るのは「遊離残留塩素」
水道法施行規則第17条は、水道事業者に塩素消毒を求めています。蛇口(給水栓)の水で、遊離残留塩素を0.1mg/L以上保つという内容です。そのため家庭で基準と見比べるなら、遊離残留塩素を測れる製品を選ぶのが基本です。
遊離残留塩素: 消毒力の強い形で残っている塩素。日本の基準はこちらが対象です。
結合残留塩素: 塩素がアンモニアなどと結びついた形。単独では測らず、計算で求めます。
総残留塩素: 遊離と結合を合わせた値。総残留塩素から遊離残留塩素を引くと、結合残留塩素になります。
商品名が「残留塩素」でも、総残留塩素を測るものや、プール・消毒液向けの高濃度用があります。パッケージに「遊離」と、1mg/L前後を読める目盛りがあるかを確認してください。
家庭で使える3つの測定方法の違い
家庭向けの方法は大きく3つです。どれも色の変化を利用しますが、読み取り方と目盛りの細かさが異なります。目盛りの段階は製品ごとに違うため、表の数値は製品例として見てください。
| 方法 | 読み取り方 | 目盛りの細かさ(製品例) | 手軽さ・費用感 | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|---|
DPD試薬(比色) | 試薬で水がピンク色になり、その濃さを色見本と目で比べる | 0.05〜2.0mg/Lを12段階、0.1〜5mg/Lを6段階など | 1回分ずつの試薬を使う。比色器が必要な型と、容器と試薬が一体の使い切り型がある | 自宅の値を基準や公表値と見比べる |
試験紙 | 水に浸した試験紙の色を、容器の色表と比べる | 0・0.1・0.3・0.5・0.7・1.0mg/Lなど | 最も手軽。器具がいらない | 浄水器の前後で塩素の有無をざっと比べる |
デジタル測定器 | DPD試薬で発色させ、色の濃さを機械が光で測って数値表示する | 0.01mg/L単位など | 本体の購入が必要で、初期費用は最も高い。試薬も別途必要 | 細かな変化を記録し続ける |
DPD試薬: 公定法と同じ発色原理
DPD法は、国が定める遊離残留塩素の検査方法の1つです。水に試薬を加えると、塩素の量に応じて淡い赤紫〜赤紫色に発色します。家庭用キットは同じ原理を使い、標準の色見本と比べて濃度を読みます。
試験紙: 手軽だが段階が粗い
試験紙は、水に浸して色表と比べるだけで結果が出ます。製品によってはDPDとは別の発色試薬を使うため、色はピンクとは限りません。浄水器の性能チェック用途を想定した製品もあります。
デジタル測定器: 目視の個人差が入りにくい
デジタル測定器も多くはDPD試薬で発色させ、その色の濃さを光の吸収量で測ります(吸光光度法)。人の目で色を判断しないため、読み取る人による差が出にくいのが利点です。
DPD試薬で測る手順
ここではDPD試薬を例に、一般的な手順を示します。試薬の量や待ち時間は製品で異なるため、細部は必ず付属の説明書に従ってください。
- 横一列に5つの丸いアイコンを並べ、矢印でつなぐフロー図
- 1「蛇口から水をしばらく流す」(蛇口と流れる水) → 2「容器を測る水で2〜3回すすぐ」 → 3「線まで水を採る」(目盛り付き容器) → 4「試薬を入れて混ぜる」 → 5「指定時間に色見本と比べる」(ストップウォッチと色見本)
- 5番目のステップだけアクセントカラーで強調し、下に「読み取りは指定の時間に」と短いラベルを添える
- 背景は白、アクセントカラー1色のフラットなアイコンで構成する
試薬の使用期限を確認します。試薬は光や湿気で変色することがあるため、冷暗所で保管します。
蛇口からしばらく水を流します。配管にたまっていた水を出してから測るためです。
容器を、これから測る水で2〜3回すすぎます。
容器の線まで水を採り、すぐに試薬を入れて混ぜます。
説明書の指定時間に色見本と比べます(例: 約5秒後、10秒後など)。
日時・蛇口の場所・水を流した時間と一緒に、数値を記録します。
測定後の液は多量の水と一緒に流し、容器はよく洗って乾かします。
水はしばらく流してから採る
測定器メーカーは、蛇口からしばらく水を出してから採水する手順を案内しています。夜間などに配管内に長くとどまった水は、塩素が減っていることがあります。いま届いている水道水の値を知りたい場合は、流してから測るのが基本です。
朝一番の水と、流した後の水を両方測ると、配管内の滞留による差を確かめられます。ただし基準や公表値と比べるのは、流した後の値にしてください。
読み取りは「すぐ」が原則
国の検査方法でも、試料は採取後すぐに試験し、発色後ただちに比色するよう定められています。DPD法では時間がたつと色が濃くなるため、読み取りが遅れると実際より高めに読んでしまいます。
あるメーカーは、遊離残留塩素の測定を1分以内に終えるよう案内しています。数分後に濃くなった色は判定に使いません。毎回同じ明るい場所で読むと、条件がそろって比べやすくなります。
測定結果の見方: 0.1mg/Lと1mg/Lが目安
結果は、法令上の最低ラインと、味やにおいに配慮した目標値の2つを物差しにすると読みやすくなります。
| 遊離残留塩素の値 | 意味 | 家庭での受け止め方 |
|---|---|---|
検出されない | 塩素が確認できない状態 | 測り方を見直して再測定する。それでも出ない場合は相談先へ |
0.1mg/L未満 | 水道法施行規則の最低ライン(0.1mg/L以上)に届かない値 | しばらく水を流して測り直す。続く場合は相談先へ |
0.1〜1mg/L | 最低ライン以上、水質管理目標(1mg/L以下)以内 | 通常の範囲。地域や季節で値は変わる |
1mg/L超 | 味・においの観点の目標値(1mg/L以下)を超える値 | 健康面の指標とは別。気になる場合は水道局に問い合わせる |
1mg/L以下は、環境省が示す水質管理目標設定項目の目標値です。塩素が多いと味やにおいに影響するため設けられています。東京都水道局は、WHOのガイドライン値が5mg/L以下であることから、蛇口の濃度で健康上の問題はないと説明しています。
色見本と見比べるときは、発色の濃さを段階で読みます。次の図は、色と数値の対応のイメージです。
- 横長の帯に、無色から濃い赤紫までの6段階の色見本を左から右へ並べる
- 各色の下に「0」「0.1」「0.2」「0.4」「1.0」「2.0」(mg/L)の数値ラベルを付ける
- 0.1の位置に縦の点線を引き「最低ライン 0.1mg/L以上」、1.0の位置に縦の点線を引き「目標値 1mg/L以下」と注記する
- 2本の点線の間をうっすら水色で塗り、「通常の範囲」と短く示す
- 色はイメージであり、実際の色は製品の色見本で確認する旨を図の下に小さく添える
値は場所・季節・時間帯で変わる
塩素は配水管を流れるうちに少しずつ減ります。そのため浄水場に近い地域ほど高く、遠い地域ほど低くなる傾向があります。東京都水道局は、途中の給水所で塩素を少量追加し、地域差を小さくする取り組みをしています。
東京都水道局は独自の目標として、0.1mg/L以上0.4mg/L以下を掲げています。ほかの地域でも、水道事業者ごとに運用の目安は異なります。1回の測定で判断せず、何日か同じ条件で測って傾向を見るのがおすすめです。
簡易キットの値は、水道事業者や登録水質検査機関が定められた方法で行う検査の結果とは異なります。鉄や亜硝酸などが水に含まれると、測定値に影響することもあります。気になる値が出たら、公表データや相談先の情報とあわせて判断してください。
自分の地域の残留塩素データを調べる方法
水道事業者は、水質検査計画や定期の水質検査の結果などを、年1回以上公表することになっています(水道法施行規則第17条の5)。自宅の測定値は、こうした公表値と見比べると位置づけが分かります。
「お住まいの市区町村名+水道 水質検査結果」で検索し、水道事業者の公式サイトを開きます。
残留塩素の値が、どの地点・どの日付のものかを確認します。自宅に近い地点を選びます。
東京都水道局のように、都内131か所の自動水質計器で測った毎日9時の値を公開している例もあります。
どの浄水場から水が届いているかが分かれば、近い地点のデータを選びやすくなります。
浄水器の前後で比べるときの条件
浄水器で塩素がどれだけ減っているかを見るときは、比べる2つの水の条件をそろえることが大切です。条件が違うと、浄水器ではなく水道水側の変動を見てしまいます。
同じ時間帯に、続けて測ります(例: 浄水器を通さない水→通した水の順)。
同じキット・同じ容器・同じ読み取り時間で測ります。
水の出し方(勢い)をそろえ、どちらもしばらく流してから採ります。
1回で決めず、日を変えて何回か測ります。
浄水器を使い始めた日やカートリッジの交換日も記録しておくと、性能の変化を追えます。
家中浄水型の場合、浄水器を通らない水を採れる蛇口があるかは設置状況によります。比べ方は設置した業者に確認してください。性能表示の読み方は浄水器を比較するときに見るべき3つの視点、交換時期は浄水器フィルターの寿命比較で解説しています。
よくある測定ミスと対策
| よくあるミス | 起こること | 対策 |
|---|---|---|
読み取りが遅れる | 色が濃くなり、高めに読む | 説明書の指定時間に読む |
容器を洗剤で洗ったまま使う | 残った成分が発色に影響しうる | 測る水で2〜3回すすぐ |
期限切れ・湿気た試薬を使う | 正常に発色しないことがある | 使用期限を確認し、冷暗所で保管する |
総残留塩素用の製品で測る | 基準(遊離)と単純に比べられない | 「遊離」と表示された製品を使う |
浄水器を通した水を測る | 水道水の値ではなく浄水器の効果を見ている | 浄水器を通らない蛇口で測る |
朝一番の水だけで判断する | 配管内の滞留で低めに出ることがある | しばらく流してから測り直す |
水道局や建物の管理者に相談したほうがよいケース
浄水器を通さない蛇口で、しばらく水を流して測り直したとします。それでも検出されない、または0.1mg/L未満が続く場合は、相談を検討してください。その前に、別の蛇口でも測って家全体の傾向か確かめておくと、状況を伝えやすくなります。
一戸建てなど水道管から直接届く家: お住まいの水道事業者(水道局)の窓口に相談できます。
マンションやビルで受水槽(貯水槽)を使う建物: 受水槽から先の水の管理は、建物の設置者・管理者の責任です。まず管理会社や管理組合に伝えます。
塩素の値に加え、色・濁り・においにいつもと違う変化がある場合は、あわせて伝えます。
東京都の保健医療局は、受水槽の水は夏場や長期休み明けに残留塩素が減りやすいと説明しています。0.1mg/L未満となった場合は、管理者が原因を調べ対策をとる必要があるとしています。
まとめ
自宅で残留塩素を測るなら、遊離残留塩素を測れる製品を選び、しばらく流した水を採って、指定の時間に読み取るのが基本です。結果は、0.1mg/L以上という最低ラインと、1mg/L以下という目標値を物差しにすると読みやすくなります。
値は地域や季節で変わるため、1回で判断せず、同じ条件で何回か測るのがおすすめです。地域の公表データとも見比べてください。塩素のにおいが気になる場合は、カルキ臭を減らす方法の比較も参考になります。
残留塩素は、目に見えない水道水の状態を数字で確かめられる、数少ない項目の1つです。測ることの価値は、1回の数値よりも、条件をそろえて続けたときに見える傾向にあると考えています。