シャンプーやトリートメントを変えても、髪のきしみやパサつきが改善しないと感じたことはありませんか。原因はヘアケア用品だけでなく、毎日使っている水そのものにあるかもしれません。
この記事では、残留塩素と硬度、それぞれが髪・頭皮に与える影響の仕組みを、研究データをもとに整理します。「抜け毛」との関係についても、分かっていること・まだ分かっていないことを明確に分けて解説します。
残留塩素が髪・頭皮に与える影響の仕組み
硬度(硬水)が髪の質感に与える影響の仕組み
「パサつき・きしみ」と「抜け毛」を分けて考えるべき理由
残留塩素・硬度、それぞれの影響の違い
気になる場合に家庭でできること
髪・頭皮に届くまでに、水は何を運んでいるか
残留塩素とは
残留塩素は、水道水の消毒のために法律で一定濃度以上を保つよう定められている塩素のことです。蛇口だけでなく、シャワーから出る水にも同じ濃度の塩素が含まれています。
硬度とは
硬度は、水に溶けているカルシウム・マグネシウムの量を表す指標です。日本の水道水の多くは軟水ですが、地域によって差があり、海外では硬水が主流の国も少なくありません。
残留塩素が髪・頭皮に与える影響
キューティクル・皮脂膜への作用の仕組み
残留塩素には酸化力があり、髪のタンパク質(ケラチン)を酸化させる性質があります。民間の浄水関連企業による研究発表(日本薬学会第145年会、2025年)では、家庭のシャワー使用を想定した条件で残留塩素に毛髪を曝露させたところ、キューティクル層に塩素由来とみられる成分の蓄積と、タンパク質の酸化・分解を示す変化が確認されました。塩素を除去した水では、こうした変化は見られなかったとされています。
頭皮についても、残留塩素が皮脂膜や常在菌のバランスに影響を与える可能性が指摘されています。詳しい仕組みはお風呂上がりの肌のつっぱり、水が関係しているかもしれませんでも解説しています。
- 髪の断面(キューティクル)と頭皮表面の2つを並べた模式図
- 塩素の粒子アイコンから、キューティクルの隙間を開かせるイメージへ矢印1本
- 同様に、頭皮の皮脂膜を薄くするイメージへ矢印1本
- 傷んだ髪を誇張する演出はせず、仕組みの説明に徹する。配色はアクセントカラー1色、背景は白でミニマルに
研究で分かっていること・まだ分かっていないこと
残留塩素が毛髪表面のタンパク質を酸化させ、パサつきや指通りの悪化につながりうることは、複数の研究で確認されています。
残留塩素と「抜け毛」そのものとの直接的な因果関係を示す査読論文は、現時点では確認されていません。毛髪表面のダメージと、毛根からの脱毛は別の現象として区別する必要があります。
硬度(硬水)が髪に与える影響
ミネラル成分が髪表面に残る仕組み
硬水に含まれるカルシウム・マグネシウムは、洗い流した後も髪の表面(キューティクル)に付着しやすい性質があります。海外の査読論文では、硬水で洗浄した毛髪のカルシウム付着量は精製水で洗浄した場合の約3倍、マグネシウムは約4倍だったと報告されています。走査型電子顕微鏡による観察でも、こうした付着が指通りやスタイルの持ちに関わる可能性が指摘されています。
- 「すすぎ」「ミネラル付着」「乾燥後のきしみ」の3ステップを横一列に並べた概念図
- 各ステップに髪の断面のシンプルなアイコンを添える
- 数値やグラフは使わず、因果関係だけを示すシンプルな構成にする
- 配色はアクセントカラー1色、装飾は排する
海外・硬水地域で髪のきしみを感じやすい理由
海外旅行や出張先で、髪がいつもよりきしむと感じたことがある方は、滞在先の水の硬度が影響している可能性があります。日本国内でも地域差はありますが、海外には日本よりも硬度の高い地域が多く存在します。
硬水地域では、洗い流すタイプよりも「つけたまま(洗い流し不要)」のヘアオイル・ミストが好まれる傾向があるとされます。硬度成分による質感変化を、油分でカバーする発想の違いだと考えられます。
| 要因 | 主な症状 | 起きている仕組み | 分かっていること・まだ分かっていないこと |
|---|---|---|---|
残留塩素 | パサつき、指通りの悪化、頭皮のかゆみ・乾燥 | 毛髪表面〜内部のタンパク質を酸化させる | 毛髪表面へのダメージは複数の研究で確認。抜け毛との直接的な因果関係は未確認 |
硬度(硬水) | きしみ、ゴワつき、シャンプーの泡立ちにくさ | カルシウム・マグネシウムが髪表面に付着する | 付着自体は査読論文で確認。付着量と抜け毛との関係を示す研究は未確認 |
「パサつき・きしみ」と「抜け毛」は分けて考える
「塩素で髪が傷む」「硬水で抜け毛が増える」といった話は広く語られていますが、髪の表面が受けるダメージと、毛根から髪が抜ける「脱毛」は、医学的には別の現象です。この2つを混同すると、実際には関係のない対策に時間や費用をかけてしまうことにもなりかねません。
進行性の薄毛(男性型・女性型脱毛症)については、日本皮膚科学会の診療ガイドラインにおいて、遺伝的要因や男性ホルモン(DHT)の関与が医学的に確立された主な原因とされています。水質による影響を示す査読論文は、現時点では確認されていません。
「髪のパサつき・きしみ」が気になる場合は水質の見直しが有効な選択肢になりえますが、「抜け毛・薄毛」が気になる場合は、まず医療機関に相談することをおすすめします。原因を切り分けることが、遠回りをしないための第一歩です。
シャンプー選びをもう少し詳しく — 洗浄成分とキレート成分
洗浄成分の種類による違い
シャンプーの洗浄成分は、大きく「高級アルコール系」「アミノ酸系」「せっけん系」に分けられます。高級アルコール系は洗浄力が強く泡立ちがよい一方、必要な皮脂まで落としやすい性質があります。アミノ酸系は洗浄力が穏やかで、皮脂を落としすぎにくいとされ、乾燥や刺激が気になる人に選ばれる傾向があります。せっけん系は洗浄力が強い一方、アルカリ性のためきしみを感じやすく、リンスとセットで使われることが多い成分です。
| 洗浄成分の種類 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
高級アルコール系 | 洗浄力が強く、泡立ちがよい | 皮脂・整髪料の汚れが気になる人 |
アミノ酸系 | 洗浄力が穏やかで、皮脂を落としすぎにくい | 乾燥・刺激が気になる人 |
せっけん系 | 洗浄力は強いが、アルカリ性できしみやすい | リンスと併用したい人 |
硬水対策としての「キレート成分」
硬水地域向けのシャンプーには、「キレート成分」(EDTAなど)が配合されている製品があります。キレート成分は、水に含まれるカルシウム・マグネシウムなどの金属イオンを挟み込んで不活性化する働きを持ち、硬水による泡立ちの低下や、ミネラル成分の髪への付着を抑える効果が期待できます。海外の硬水地域では、こうしたキレート成分入りのシャンプーが広く販売されています。
カラーリングした髪と、水質の関係
塩素には酸化力があり、キューティクルを開かせる性質があるため、カラーリングした髪の色素が流れ出しやすくなり、退色を早める一因になるといわれています。特にプールの水は、消毒のために水道水よりも高い濃度の塩素で管理されている場合があり、色落ちや、金髪が緑がかって見える「グリーンヘア」現象の原因としてよく知られています。
日常のシャワーで使われる残留塩素は、プールの塩素濃度と比べるとかなり低い濃度で管理されています。ただし「塩素の酸化力がキューティクルを開かせる」という基本的な仕組みは共通しているため、カラーリングした髪の色持ちが気になる場合は、浄水シャワーの活用も選択肢のひとつです。
気になる場合、家庭でできること
シャンプー選び: アミノ酸系など洗浄力が穏やかなシャンプーは、必要な皮脂まで奪いにくいとされています。硬水地域向けにキレート成分を配合したシャンプーも販売されています。
浄水シャワーヘッドを使う: 活性炭などのろ材で残留塩素を低減できます。対応できる物質や持続期間は製品によって異なるため、詳しくはシャワーの水質は、肌当たりにどう影響するかも参考にしてください。
家中浄水型を検討する: 浴室だけでなく家中の蛇口の水質をまとめて見直したい場合は、「家中浄水」と「蛇口取付型」の違いとは?で方式ごとの違いを整理しています。
基本の頭皮ケアを見直す: 洗いすぎない、すすぎを十分に行う、乾かす際は根元からといった基本も、水質対策と合わせて見直す価値があります。
まとめ
髪のパサつきやきしみには、シャンプー・トリートメントだけでなく、残留塩素・硬度という水質の要素も関わっています。一方で、抜け毛(脱毛)との直接的な因果関係を示す研究は、現時点では確認されていません。
「質感の変化」と「脱毛」を分けて考え、気になる症状に応じた対策を選ぶことが大切です。もしご家庭の水環境を見直したい場合は、SUIPUREの資料もあわせてご覧ください。
「水のせいで抜け毛が増える」という話は不安を煽りがちですが、現時点でそう言い切れる根拠はありません。分かっていることと分かっていないことを分けて伝える姿勢を、これからも大切にしたいと考えています。