乳児用ミルクを作る際の水は、一度沸騰させて冷ますなど、衛生面での取り扱いが重要とされています。硝酸態窒素など、乳児への影響が指摘される成分にも関心が集まっています。
この記事では、粉ミルクを70℃以上のお湯で溶かす理由から、水道水・ミネラルウォーターそれぞれを使う際の注意点まで、WHOや国内の公的情報をもとに整理します。
粉ミルクを70℃以上のお湯で溶かす理由
水道水を使う場合に知っておきたいこと
ミネラルウォーターを使う場合に知っておきたいこと
気になる場合にできること
粉ミルクを70℃以上のお湯で溶かす理由
WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)が2007年に策定した調乳ガイドラインでは、粉ミルクを70℃以上のお湯で溶かすことを推奨しています。これは、粉ミルクの製造・流通過程でまれに混入することがあるサカザキ菌(Cronobacter)などの病原菌を減らすためです。粉ミルクは完全に無菌の製品ではないため、この温度での調乳が安全対策として位置づけられています。
サカザキ菌は自然界に広く存在する菌で、健康な大人にはほとんど影響がありませんが、新生児や低出生体重児、免疫力が低い乳児では、まれに敗血症や髄膜炎などを引き起こすことがあるとされています。
水道水を使う場合に知っておきたいこと
硝酸態窒素とメトヘモグロビン血症について
硝酸態窒素は、体内で亜硝酸に変化すると、赤血球中のヘモグロビンの働きを妨げ、酸素を運びにくくする「メトヘモグロビン血症」を引き起こすことがあります。全身が青白くなる症状から「ブルーベビー症候群」とも呼ばれます。乳児は胃酸が弱く腸内細菌が増殖しやすいこと、還元酵素の働きが未熟なことから、大人より影響を受けやすいとされています。
国内では、井戸水を使って調乳したケースで、乳児がメトヘモグロビン血症を発症した事例が報告されています。原因は、その井戸水に含まれていた硝酸態窒素の濃度が水質基準を上回っていたことでした。
水道水は、硝酸態窒素・亜硝酸態窒素の合計が10mg/L以下となるよう水質基準で管理されています。報告されている事例の多くは、この基準による管理を受けない井戸水によるものであり、基準を満たした水道水を通常通り使用している場合に過度に心配する必要はありません。
井戸水を使う場合の注意
自家用の井戸水は水道法の直接の規制対象外のため、硝酸態窒素を含む水質項目が管理されているとは限りません。乳児のミルク作りに井戸水を使う場合は、事前に水質検査を行い、基準を満たしていることを確認することが推奨されます。硝酸態窒素は、農地からの肥料成分の浸透や生活排水の影響などで地下水に混入することがあり、井戸の立地環境によって濃度は大きく異なります。
なお、メトヘモグロビン血症は乳児に特有のリスクというわけではなく、大人でも高濃度の曝露があれば起こりえます。ただし乳児は前述の生理的な理由から発症しやすく、粉ミルクを溶かす水として使う量・頻度が多いことも、リスクが特に注目される理由のひとつです。
ミネラルウォーターを使う場合に知っておきたいこと
国内で販売されている粉ミルクの多くは、日本の軟水を前提にミネラル成分のバランスが調整されています。硬度が高いミネラルウォーターを使うと、まだ発達段階にある乳児の腎臓や消化器に負担をかける可能性があるとされ、調乳には硬度60mg/L程度以下の軟水が推奨されています。
また、製造時に加熱殺菌されていないミネラルウォーターを使う場合は、使用前に一度沸騰させることが推奨されています。パッケージの表示で「軟水」「硬度」の記載を確認したうえで選ぶとよいでしょう。
気になる場合にできること
水道水を使う場合は、通常の水質基準管理のもとで問題なく使用できます。70℃以上のお湯で溶かすというWHOの推奨手順を守ることが基本です。
井戸水を使う場合は、事前に硝酸態窒素を含む水質検査を行い、基準を満たしているか確認しましょう。
ミネラルウォーターを使う場合は、硬度60mg/L程度以下の軟水を選び、非加熱製品は一度沸騰させてから使用しましょう。
浄水器を使う場合は、対応物質や乳児用途への適合性をメーカーに確認することをおすすめします。
まとめ
赤ちゃんのミルク作りにおける水のポイントは、70℃以上での調乳という衛生面の基本を守ったうえで、水道水なら水質基準による管理を、ミネラルウォーターなら硬度と加熱殺菌の有無を確認することです。井戸水を使う場合は、硝酸態窒素を含む水質検査を事前に行うことが特に大切です。いずれの場合も、根拠のない不安に振り回されるのではなく、確認すべきポイントを知ったうえで選ぶことが安心につながります。
詳しい取り扱いは、かかりつけの医師・自治体の案内もあわせてご確認ください。もしご家庭の水環境を見直したい場合は、SUIPUREの資料もあわせてご覧ください。
小さなお子様がいるご家庭ほど、情報が多すぎて逆に不安になりがちです。根拠のある情報を淡々とお届けすることを、これからも心がけます。